35歳からの中国語独学

独学で中国語をマスターするために試行錯誤しています。また中国や瀋陽にまつわる色々な事を書きます。

中国語の文の成分 主述述語文

东郭先生把它放出来,狼前后看了看,说:*1

今回のお題です。問題は一つ目のコンマ以降の「狼前后看了看」の部分です。

 

その前に文の前後関係を説明します。

猟師に追われていた狼を東郭が自分の荷物を入れた袋に隠れさせてやります。そしてその袋から狼を出したあとの場面です。

   

問題は「看了看」の主語は何でしょうか?

東郭の場合

「東郭が狼の前後を見た」ということになるのでしょうか?しかしそれであれば目的語の位置がおかしいと感じます。このように文の構造を見ると違うことに気がつきます。「看」の前にある「狼」「前后」が二つとも名詞です。東郭が主語であるならば、目的語は動詞の後になるか、もしくは「把」を使えば語順はそのままで行けそうです。しかしそうではありません。となると「狼」が主語でしょうか?

 

狼の場合

しかし次に続く「前后」が名詞です。となると名詞が二つ続いています。これはどういう事でしょうか。この場合は主述述語文であることを疑います。そうすると「狼」は主語ではなく主題となり、続く「前后」が主語ということになります。

 

狼前后が主語の場合

これは「狼前后」という名詞はないので、「狼」と「前后」の間に「的」が省略されているのではないか?という考えですが「狼の前後」という訳ですね。しかし、これも文法的には間違いのようです。「的」の省略が可能な場合は「的」の後ろが親族名詞か所属名詞あるいは「指示代名詞+名詞」の場合などです。*2ここでは詳しく解説しませんが、「狼」と「前后」の関係では「的」の省略ができないません。

 

 

前后が主語の場合

日本語に訳すと「狼は前後を見た」ということになりますが、「前后」が主語であるのならば「前後が見た」とおかしな文になりそうなのですが、文法書には以下のようにあります。

 

1)主語と述語の関係    中国語の主語と述語の関係は必ずしも動作主(動作・行為の送り手,シテ)とその動作というわけではありません. 時に動作・行為を受けるもの, ウケテが主語ということもありますし, シテ, ウケテのどちらでもない場合もあります.     (Why?にこたえる はじめての 中国語の文法書   p155)

 

 

 

 

Why?にこたえるはじめての中国語の文法書

Why?にこたえるはじめての中国語の文法書

 

 

 

 

私の解答

 

ということで「狼前后看了看」の主語は「前后」ということになります。日本語にすると「東郭さんが狼を出すと、狼は前後を見て、言いました」という意味になります。

 

ただこの文章は文法の構造が分かっていなくても、文脈上意味を捉えるのは難しくありません。しかし、文法的に理解しようと思うと少し難しくなります。

 

文法的には復文で後半は主述述語文構造。主述述語文の主語はウケテの「前后」ということになります。

*1:

 

新中国語―《基礎漢語課本》日本語版 (4)

新中国語―《基礎漢語課本》日本語版 (4)

 

 

*2:

 

誤用から学ぶ中国語―基礎から応用まで

誤用から学ぶ中国語―基礎から応用まで