35歳からの中国語独学

独学で中国語をマスターするために試行錯誤しています。また中国や瀋陽にまつわる色々な事を書きます。

誰が見るんだこんなに長いドキュメンタリー映画 王兵(wang bing)監督「 铁西区」9時間

アマゾンの内容紹介

世界が驚嘆した恐るべき21世紀の映像作家ワン・ビン(王兵)大長編作。

中国北部瀋陽にある鉄西区。ここは日本占領時に工場が建てられ、その後中国共産党国家によって巨大工場地帯となった場所である。しかし90年代後半、重工業は衰退の一途を巡り始め、工場は次々と撤退、人口は減少し、街は解体されていった。本作はその姿を「工場」「街」「鉄路」という三部構成によって捉えた、まさに奇跡的なドキュメンタリー作品。9時間以上におよぶ大作だが、見る者を引き込んで離さない圧倒的映画である。
廃虚となっていく工場や街、変化を余儀なくされる人々、刻々と過ぎゆく時の流れ。対象となる地域を限定し長い時間をかけて記録することにより中国社会が抱える現実をも浮き彫りにした映画史上に残る傑作!! 

[Disc1.2]第一部「工場」(計244分)
鉄西区全景。かつて百万人の労働者を抱えていたといわれる隆盛は、もはや無い。わずかに操業されている工場で危険な労働を担う工員たち。彼らは過酷な条件で就労し生計を立てていたが、その工場にも破産の危機が迫っていた―。 

[Disc3]第二部「街」(178分)
工員向け住宅エリアで親と共に暮らすティーン・エイジャー達。カメラは彼らの屈託のない笑い、行き場のない怒りや憤りを写し撮り、夢もなく無為に過ごす青春の日々を描く。やがて町は再開発地域の指定を受け、取り壊されてゆくのだった―。
[Disc4]第三部「鉄路」(134分)
直線的に延びてゆく鉄路。走る貨物列車。廃墟のような工場をつなぐ鉄道で働く男達。ある日、路線脇に住むクズ拾いの男が逮捕される。男の息子は動揺し、不安な毎日を過ごす。釈放された父は息子に自分の人生を語る―。季節は巡り、人々の生活は続いてゆく。

鉄西区 [DVD]

鉄西区 [DVD]

 

  いったいこの映画の需要がどこにあるのかわかりませんが、密かに話題になっていたドキュメンタリー映画。ちなみに私は買いました。

 

 この映画はテレビのドキュメンタリー映像にあるようなナレーションは一切ありません。工場の労働者に紛れて王兵監督が言葉少なくビデオカメラで工場の様子や生活する人などを撮影したもので、淡々と長回しで撮影された映像がつなげられているだけです。もちろん映画の中では工場が閉鎖される様子や少年たちの恋愛など何かしらの出来事はあるのですが、その制作方法は普通の人が通して見ることができないくらい退屈です。例えていうなればカメラの視点は瀋陽に滞在中の私と重なるような気がします。私は中国語が上手く喋れないので、必然的に皆の会話を聞くだけになります。飲食店で4時間、妻とその友達の会話を見ている事もあります。王兵監督の映像と、中国語を喋れない私の視線はどことなく重なるのです。

 

 鉄西区は私の妻の地元瀋陽にあります。この映画が撮られたのは2000年前後。激しい時代の変化に伴い国営工場が閉鎖されていく様子や、そこで働く人たちの生活などを王兵監督が一人で撮影したものです。私は瀋陽のことやその時代の様子が知りたくてこの映画を買いました。「鉄西区」を見ると撮影された2000年前後から現在に至るまで、瀋陽がどれほどのスピードで変化しているかよくわかります。「鉄西区」に出てくる工員と同様に、義理の父も工場で働いていたそうで、今はそこから年金をもらっています。そして映画の中に出てくる街同様に妻の以前の住居でも14、5年前に区画整理があり引越をしたそうです。

 

 普通に見るにはあまりにも退屈すぎる映像ですが、その淡々とした撮影方法は私にとっては妻の地元瀋陽を知る為の一つの資料としてはとても興味深い手法であるような気がします。もしかしたら無駄に長く不親切なこの方法でしか表現し得ない事があるのかもしれません。

 


Tie Xi Qu: West of Tracks - Rust / AFF 2011 - YouTube